品質~Quality~

真珠の美しさは様々な要素のバランスで決まります。

品質に関する基準はありませんが、優先順位を見つけるためのポイントを紹介いたします。

 

巻き

真珠は、核と呼ばれる玉の周りに真珠層が形成されて出来上がります。その真珠層の厚さのことを「巻き」と言います。真珠層は1000枚以上の薄い炭酸カルシウムの結晶が何層にも重なってできており、巻きが厚いだけでなく、その質も大切な要素です。巻きは真珠の耐久性や真珠独特の色やテリと関係しています。巻きが薄くてもテリが良いものはありますが、深みのある輝きにはなりません。アコヤ真珠の真珠層はきめ細かく、巻きの厚さは養殖期間が長くなればなるほど厚くなる傾向があります。

 

テリ(光沢)

真珠の光沢、輝き具合を「テリ」と呼び、さらには真珠が反射する独自の干渉色をともなう光の質のことを指します。テリは真珠層の厚さや均一性、光の透過性など、真珠層の性質によって決まります。深みのある輝きには巻きの厚さが必要ですし、巻きが厚くても結晶の重なりが不規則だと良いテリが出ません。また、真珠層を構成する炭酸カルシウムの結晶が大きく薄くきれいであると、光の反射や屈折、干渉などの作用で、独特のテリや色が出るのです。テリの良い真珠は光の反射が明るくシャープですが、テリが劣る真珠は、反射が弱くぼんやり鈍く見えます。

 

真珠の色を構成する要素はさまざまです。まず押さえておきたいのは、真珠の実体色(ボディカラー)と真珠層への光の反射などによる中心部の「干渉色」。これらが融合して美しい印象を生み出すのです。質の良いものだと真珠全体が特有の虹色の輝きを放ち、色にも立体的な奥行きを生み出します。場所、時間、季節、天候、直接光か間接光かなど真珠を見る環境のほか、母貝の種類や貝の持つ色素、内部の有機物の有無など真珠本来の性質によっても異なります。また、加工処理によっても異なります。また、加工処理によって色を変えることもあります。

 

色と同様、真珠の形もさまざまです。真珠は生き物によって作られるため、核の周りに真珠層が均一に分泌されないことがあるのです。特に養殖期間が長いほど巻きが厚くなり、丸くない真珠ができる確率は高くなります。真珠の形には「ラウンド」、「セミラウンド」のほか涙型の「ドロップ」や「バロック」などがあります。真円の天然真珠が希少だった歴史から、今でも真円が最も高く評価されていますが、近年はドロップやバロックなど変形真珠の評価も高まっています。

 

キズ

「キズ」には天然キズと加工キズがあります。天然キズは養殖中に自然にできるもので、シワやへこみ(えくぼ)突起など、真珠表面の滑らかさを損なうものを指します。天然キズは研磨などで除くことが難しいので、キズ位置の近くに穴開けし目立たなくしたりします。変化しないキズであれば、それも真珠の個性です。一方、養殖後についた加工キズは表面についたキズは研磨などで取れることが多いのですが、真珠層内部に生じたキズは修復できません。真珠は硬度が低く柔らかいので傷つかないように注意しましょう。

 

サイズ

真珠は種類によって平均的なサイズが異なります。アコヤ真珠は2.0~10.0㎜が中心で、10.0㎜以上は大変希少です。白蝶真珠や黒蝶真珠は10.0㎜以上がほとんどでしたが、最近は7.0㎜くらいから出回るようになり、アコヤ真珠との区別が難しくなっています。また、淡水真珠も改良により丸いものが作られるようになり、真珠をサイズだけで見分けることが困難になってきました。

 

連相

「連相」とは、真珠一粒の価値を問うものではなくジュエリーにしたときの美しさの判断基準のひとつです。 特にネックレスで隣り合う珠の色やテリ、巻きなどの品質面での揃い具合を見ます。連相の良いネックレスほど統一感がありフォーマルな場面で好まれます。真珠は同じものがふたつとない繊細な宝石です。糸通しの方向ひとつ取ってみてもバランスが崩れると言われるほど、連相には熟練した技と経験が必要です。

 

~渡辺郁子(2015)Brand Jewelry 特別編集 パール WORD LABO発行~